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設備設計の面白さ、
難しさと
総コンの
取り組み
創立50周年、誠におめでとうございます。
まずは、皆さんが携わる設備設計のお仕事の面白さと難しさをお教えください。
一昔前に比べて建物が巨大化・高層化しているので、建物の設備も複雑化していく傾向にあります。建物の進化に伴って建築設備というジャンルがより重視されるようになってきました。設備設計に特化している総コンが活躍できる場面が増えている点では、非常に面白い時代になったと感じます。ただ、設備設計は建物の表面から見えない部分が多い設計なので、なかなか評価されにくいという側面があります。
設備設計の立場を主張しすぎると、意匠設計と意見がぶつかることも多々あります…。意匠設計は空間を魅力的に見せることを追求するのに対して、設備設計では快適性や機能性を重視するのが大きな違いです。また、近年は地球温暖化に配慮しながら、建物内の快適性を保つことの重要度が高まってきており、照明の明るさや空調による室内環境設定、トイレ環境など、建物の利用者がいかに快適に過ごせるかがポイントとなりますね。
地球温暖化の設備設計に与える影響は、大いにあります。昔と比べると、設備設計の予算や発言力は高まっていると感じますし、省エネについて考慮するのが当たり前になってからは設備設計の重要度も相当高まりましたよね。
建築設計の意匠・構造・設備は、三者間で対等に話し合わないといけないと思っています。意匠設計の観点から「設備はできるだけ隠したい!」という気持ちは分かりますが、そうすると空調が効かない、照明が暗い─など、さまざまな問題が発生することになりかねません。
そうそう。意匠・構造・設備の間でのコミュニケーションは本当に重要ですよね。それだけではなく、お客様と密にコミュニケーションを取ることの重要性も感じています。よくあるのが、建物が完成した後にお客様から「コンセントがここにあればよかったのに…」と言われてしまうこと。お客様からどれだけ細かく情報を引き出せるか、そして使う場面を想像して設計できるかが、設備設計の難しさであり面白さです。
石田さんと菅原さんは、日本武道館の増改修工事に携わったそうですね。
日本武道館の増改修工事においては、建築当時の意匠をそのまま残すことが求められました。照明設備を最新のLED照明に取り替えるとしても、最新の設備をそのままの形で設置してしまうと以前の意匠性が損なわれてしまいます。
まずは現地調査で現場を知るところから始め、建築当時の意匠性を保ちながら最新設備を組み込むにはどうしたらいいかいろいろ試行錯誤し、苦労しましたね…。
図面と現地を確認しながら現況を正確に把握して─というのは非常に大変な作業でした。けれども、日本武道館は各種武道の全国大会等の会場であり、また国や各企業の行事、さまざまなコンサート会場としても使われるなど多くの方に知られている有名な建物。このような案件に携われたのはとても貴重な経験でした!
山岸さんと浮田さんは、東京大学総合図書館の改修工事に携わられたとうかがいました。
東京大学総合図書館も、日本武道館と同様に創建当時の姿を残しつつ、最新の設備を組み込む必要がありました。元になる図面が非常に古く、文章が右から左に書かれていたり、今は使われていない「尺」という単位だったり。設計というよりも、歴史の勉強をしているみたいでした…。
このプロジェクト自体、約8年という大変な長期間でしたよね。
工事期間中も学生の方々が図書館を利用なさっていたため、水道や電気などのインフラをストップさせることが出来ず、仮設計画も含めた工程計画を想定しながらの設計には苦労しました。
また、プロジェクト期間が長いと、その間に新しい建築設備が登場することもあります。例えば、LED照明はこのプロジェクトの初期では最新設備で珍しかったのですが、8年も経つと割と一般的になっていましたね。
東京大学総合図書館は、外壁や中庭の美しさに最大限配慮せねばならない点が特徴でした。エアコンの室外機を屋上に上げるなどの工夫も、設備設計単独で判断できず、意匠設計や構造設計とコミュニケーションを細かく取る必要がありましたね。
設備設計の重要性は高いけれども、難しさも多いことがよくわかりました。
では、お客様からの期待に応えるため、総コンではどのような取り組みをなさっていますか。
現在建築業界では、先ほど山岸さんが言っていた「省エネ」をはじめ、「DX」や「BIM(※1)」などの先進技術が重要視されてきています。このような取り組みは、総コンのようなある程度規模のある設計事務所でないと対応しきれないと思います。また総コンでは一級建築士や建築設備士などの有資格者が多く、今後の法規制の改訂や新しい技術にも柔軟に対応可能です。
※1Building Information Modelingの略。
建設する建物を3Dモデルで構築管理すること。
総コンには「ブラザー&シスター制度」という若手教育の制度があります。私は一級建築士取得を目指して勉強しているのですが、ブラザーの瀧ヶ崎さんが定期的に声をかけてくださるので、モチベーションを保ちながら勉強できています!
「BIM」や「ZEB(※2)」などの先進技術でいうと、社内で10人ほどのワーキンググループを作り、定期的に集まって勉強や今後の戦略を話し合う機会があります。さらに2ヶ月に1回の「技術交流会」ではワーキンググループでの情報、メーカー講習で学んだことを社内全体に共有したりしています。
※2Net Zero Energy
Buildingの略。
消費する年間の一次エネルギー収支ゼロを目指した建物。
他にも「技術マイスター制度」という社内での勉強の機会もあり、私は未利用エネルギー・再生可能エネルギーに関する技術マイスターを目指しています。まだ少人数のグループなので、今は講習会に参加するなど基礎学習を各々が進めて、グループ内でアウトプットできるように知識習得に励んでいます。今後は業務に取り入れられるレベルまで到達するのが、グループ内での目標です!